
不動産を売却する際には通常、売主本人が契約の場に立ち会うことが求められます。
しかし、病気や遠方に住んでいるなどの事情で本人が手続きに立ち会えない場合は、委任状を用いて代理人に不動産を売却してもらうことができます。
この記事では、不動産売却の際に委任状が必要になるケースや、委任状の具体的な書き方、準備する書類、作成時の注意点について詳しく解説します。
不動産売却で代理人に手続きを委任する必要がある方はぜひ参考にしてください。
- 不動産売却の委任状の書き方
- 委任状を作成する際に準備するもの
- 不動産売却で委任状が必要になるケースについて

監修者
松屋不動産販売株式会社
代表取締役 佐伯 慶智
住宅・不動産業界での豊富な経験を活かし、令和2年10月より松屋不動産販売株式会社にて活躍中。それ以前は、ナショナル住宅産業(現:パナソニックホームズ)で8年間、住友不動産販売で17年間(営業10年、管理職7年)従事。
目次
不動産売却の委任状とは代理人に代理権があることを証明する書類のこと
不動産売却の委任状とは、売主本人に代わって不動産の契約手続きを行う代理人が、その権限を持っていることを証明するための書類です。
通常、不動産を売却する際は売主本人が契約に直接立ち会います。
しかし、病気や高齢で動けない、または遠方に住んでいるなど、何らかの事情で売主本人が立ち会えないケースもあります。
上記のような状況の場合、委任状を作成することで、家族や信頼できる専門家に契約手続きを任せることが可能になります。
委任状は売主の意思を代理人が代行するための非常に重要な書類のため、委任状に記載されている範囲内でのみ、代理人は手続きを進めることができます。
内容が曖昧だったり不十分だったりすると、予期せぬトラブルに発展することもあるため、委任状を作成する際は信頼できる人物を選び、委任内容を明確かつ具体的に記載することが大切です。
不動産売却の委任状の書き方
不動産売却の委任状は法的効力が強いため、漏れや誤りがないよう正確に記入する必要があります。
決まった書式はありませんが、以下の項目を具体的かつ明確に記載しましょう。
- 売主(委任者)の氏名・住所
- 代理人(受任者)の氏名・住所
- 売却対象の不動産情報(所在地・地番など登記簿の内容)
- 委任する具体的な手続き内容(売買契約手続き、署名押印、引き渡しなど)
- 委任状の作成日(委任日)
- 委任者の実印押印(印鑑証明書を添付)
- 委任状の有効期限
これらの記載事項に不備があると、委任状が無効になるリスクがあります。作成後は必ず内容をよく確認しましょう。
また、初めて委任状を作成する方は、以下のひな形を活用すると安心です。必要に応じて内容を適切に調整してください。
【ひな形】不動産売却の委任状フォーマット
以下に、委任状作成に役立つひな形をご紹介します。状況に合わせてフォーマットを調整し、正確に記載して作成しましょう。
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不動産売却の委任状を作成する際に準備するもの
不動産売却の際に委任状を作成する場合、委任者(売主)と代理人それぞれが用意すべき書類があります。
事前に準備しておくことで、契約手続きがスムーズに進みます。
不動産取引は高額で重要な手続きであるため、書類に不備があると手続きが中断したり、取引が遅れたりすることがあります。
書類の発行日や有効期限もしっかりと確認し、余裕を持って準備をしましょう。
以下にそれぞれが準備すべき書類を整理しておきます。
代理人が準備するもの
代理人が手続きを行う際には、基本的に本人確認書類のみが必要になります。
- 本人確認書類
運転免許証やマイナンバーカードなど、本人確認のために必要です。原本を持参すると手続きがスムーズになります。住民票が必要になるケースもあります。
これらの書類に不備があると、代理人として認められず手続きが止まってしまう可能性があります。
委任者が準備するもの
売主本人が準備する書類は以下の通りです。
- 印鑑証明書(発行後3か月以内の原本)
売主本人の意思を証明するために必ず必要です。委任状と一緒に提出します。 - 実印
委任状への押印に使用します。印鑑証明書と一致する実印を用意しましょう。 - 本人確認書類のコピー
運転免許証やマイナンバーカードなど、売主の本人確認書類です。コピーを準備しておきましょう。住民票が必要になるケースもあります。
特に高額な取引となる不動産売却では、委任状の信頼性を担保するために、これらの書類が非常に重要です。
期限切れの書類や住所変更が未反映の場合、取引自体が中断する可能性があります。
書類は余裕を持って取得し、内容に誤りがないかを事前にしっかり確認しましょう。
不動産売却で委任状が必要になるケース
委任状は、売主本人が契約に直接立ち会えない場合に代理人へ手続きを任せるための書類です。
不動産売却は通常、売主自身が行いますが、さまざまな事情により手続きが困難な場合があります。
手続きが困難な場合でも、委任状を準備しておけばスムーズに契約を進めることが可能です。
特に以下のような状況では委任状が非常に役立ちます。
- 遠方の不動産の場合
- 共有名義の場合
- 弁護士や司法書士に委託する場合
ここでは、それぞれの具体的なケースを解説していきます。
遠方の不動産の場合
売却したい不動産が遠方にある場合、売主本人が頻繁に現地へ足を運ぶのは費用や時間の面で大きな負担となります。
例えば、東京在住の売主が北海道や沖縄など離れた地域の土地や建物を売却する際、契約のたびに現地を訪問するのは現実的ではありません。
このような場合、委任状を利用して現地にいる家族や信頼できる代理人に手続きを委ねることで、移動の負担を大幅に軽減できます。
また遠方の不動産を売却する際は契約の署名だけでなく、現地での物件確認や司法書士とのやり取りなど複数回におよぶ手続きが必要になります。
その都度遠方へ出向くことは、売却活動において非効率です。
委任状を活用して、あらかじめ代理人が行える手続きの範囲を明確に定めておけば、取引が円滑に進み売主も安心して売却を任せることが可能になります。
共有名義の場合
不動産を夫婦や兄弟など複数人で共有している場合、売却時に所有者全員が契約の場に揃うのは難しいことがあります。
例えば、相続した土地を兄弟で共有している場合、仕事や居住地の違いから日程調整が困難になることもあります。
このようなケースでは、委任状を作成して代表者を指定することで、代表者一人が契約を進めることができ、効率的な手続きが可能になります。
さらに、委任状を利用すれば、交通費や日程調整の負担も軽減されます。
ただし、委任状は共有者全員の同意を示すものであるため、それぞれが実印を押印し、印鑑証明書を添付する必要があります。
委任内容も曖昧にせず明確に記載することで、代理人の権限範囲をはっきりさせ、後々のトラブルを防ぎましょう。
弁護士や司法書士に委託する場合
不動産売却手続きが複雑で、売主自身で対応することが困難な場合、弁護士や司法書士などの専門家を代理人として委任する方法があります。
例えば、売主が海外在住で直接手続きができないケースや、高齢または病気で契約に立ち会えない場合などには、専門家に委託することで円滑かつ安心して取引を進められます。
不動産売却の委任状を作成する際の注意点
委任状は、不動産売却の際に代理人に大きな権限を与える重要な書類です。
そのため、作成にあたっては細心の注意を払う必要があります。
内容が曖昧だったり、不十分な記載があったりすると、思わぬトラブルを引き起こす可能性があります。
代理人が売主の意思に反した行動を取ってしまったり、契約の条件が変わってしまったりするリスクを避けるためにも、委任状の作成時には以下で紹介するポイントをしっかり押さえておきましょう。
委任状を作成する際のポイントは以下の通りです。
- 委任状の書式は自由
- 本人(委託者)と代理人の名前と住所を記載する
- 代理人の権限を拡大解釈されないために委任事項を限定する
- 「一切の件」などのあいまいな表現は避ける
- 委任した日付を明示する
- 実印による押印と印鑑証明書の添付を行う
- 委任状には捨印を押印しない
不動産取引は高額であり、些細なミスが大きな影響を与えることもあるため、十分注意することが大切です。
ここでは不動産売却の委任状を作成する際のポイントを詳しく解説します。
委任状の書式は自由
委任状は法律で定められた決まった書式がなく、手書きでもパソコンでも自由に作成可能です。
ただし、自由な書式だからといって安易に簡素化すると、重要な項目を漏らしてしまう可能性があります。
委任状で最も重要なことは、形式ではなく記載内容が正確かつ明確であることです。
初めて委任状を作成する方や作成に不安を感じる方は、この記事で紹介している委任状の雛形(フォーマット)を参考にすることをおすすめします。
このフォーマットを使用することで、記載すべき内容を確実に網羅でき、安心して不動産売却の手続きを進められるでしょう。
本人(委託者)と代理人の名前と住所を記載する
委任状には、同姓同名の他人との混同を防ぐために本人(委託者)と代理人(受任者)の氏名・住所を正確に記載することが必要です。
住所も省略せずに番地や号室まで登記簿記載通り正確に書くことで、本人確認を確実に行うことができます。
特に、不動産取引は登記情報との一致が求められるため、住所表記に誤りや省略があると委任状そのものが法的に無効となってしまう場合があります。
登記簿の記載や身分証明書の内容をよく確認し正確に記載して、後のトラブルを未然に防ぎましょう。
代理人の権限を拡大解釈されないために委任事項を限定する
委任状を作成する際は、代理人が実際に行える手続きの範囲を具体的かつ限定的に記載しましょう。
代理事項を詳しく記述することにより、代理人の権限範囲を明確に示すことができます。
例えば「売買契約の締結に関する署名押印および物件引き渡し手続き」など、内容を明確に指定することが重要です。
委任事項が曖昧だと、代理人が本来意図していない手続きまで行えると解釈される可能性があり、トラブルの原因となります。
具体的で明確な表現を使うことで、代理人の行動範囲を明示的に制限できるでしょう。
「一切の件」などのあいまいな表現は避ける
委任状に「一切の件」や「すべての手続き」といった曖昧で広範囲な表現を使うのは避けましょう。
幅広い表現を使うと、代理人に想定以上の権限が与えられてしまい、売主が意図しない行動や判断を代理人が勝手に行う可能性があります。
例えば「売却に関する一切の権限を委任する」といった表現を用いると、代理人が自由に値引き交渉を行ったり、引き渡し時期を変更したりできる余地が生じてしまいます。委任状には、委任内容を具体的かつ詳細に記載し、代理人が自由に行動できる余地を極力なくすことが重要です。
委任した日付を明示する
委任状には、必ず委任を行った日付を明記しましょう。委任日を記載することで、代理権がいつから有効になっているかを明確に証明できます。日付がない委任状は正式な書類として認められない場合があり、取引上のトラブルの原因となります。
また不動産取引においては、委任状の日付が売買契約書の日付よりも前であることが求められます。後から作成されたと疑われると、契約自体が無効となる恐れもあるため、日付をはっきりと記載することが大切です。
日付の記載を徹底することで、安心して取引を進められるでしょう。
実印による押印と印鑑証明書の添付を行う
不動産売却の委任状には、必ず委任者の実印での押印と発行後3か月以内の印鑑証明書の添付が必要です。実印と印鑑証明書を組み合わせることで、委任状が確かに本人の意思に基づいて作成されたことを公的に証明できます。
認印やシャチハタ印などを使うと、不動産会社や金融機関、取引相手から委任状として認められない可能性があります。特に不動産売却のような重要な取引では、書類の信頼性を高めるためにも実印と印鑑証明書をセットで準備することが必須です。
委任状には捨印を押印しない
委任状を作成する際、捨印は絶対に押さないようにしましょう。捨印を押してしまうと、代理人や第三者が後から内容を勝手に訂正・変更できる可能性があり、売主の意思に反する内容に書き換えられてしまうリスクがあります。
例えば代理人が契約条件や売却価格を書き換えてしまうと、売主が意図しない契約が成立してしまう恐れがあります。このようなトラブルを防ぐためにも、委任状に捨印を押さないことを徹底し、もし訂正が必要な場合は、新たに書き直すことをおすすめします。
捨印とは:あらかじめ書面の余白部分に押印しておき、誤りが発覚したときに「訂正印」として利用できるようにしておくもの
まとめ
不動産売却では、売主本人が契約に立ち会えない場合「委任状」を使って代理人に手続きを任せることが可能です。
ただし、委任状は代理人に売主の権限を与える非常に重要な書類であるため、作成時には慎重な対応が必要です。
売主と代理人それぞれが必要な書類を揃え、委任状には不動産情報や委任事項、日付、有効期限などを明確に記載し、実印を押印したうえで印鑑証明書を添付することが求められます。
また委任状作成の際には代理人の権限範囲を明確に定め、「一切の件」など曖昧な表現や捨印は避けましょう。
この記事で紹介した委任状の雛形(フォーマット)を参考にすれば、必要項目を網羅し、安心して手続きを進められます。
不動産売却を円滑かつ安全に進めるためにも、本記事で解説した内容を参考に委任状を作成しましょう。