
「空き家は固定資産税が6倍になるのは本当?」
上記のような疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。
相続や転居などで空き家を所有する立場になると、「本当に税金が急に増えるのか?」「どんなきっかけで増額されるのか?」と不安に感じるのも無理はありません。
実は、2023年12月13日に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が改正され、「管理不全空き家」も新たに課税強化の対象となりました。
法改正により、「特定空き家」または「管理不全空き家」に指定され行政から「勧告」を受けると、翌年度から住宅用地の特例が外れ、固定資産税が最大6倍に増額される可能性があります。
本記事では、空き家の固定資産税が6倍になる条件や時期に加え、6倍の課税に至るまでの流れ、さらに増額を回避するための5つの具体的な対策も紹介します。
法改正のポイントや「住宅用地の課税標準の特例」などの減免制度も具体的に解説します。
空き家を放置すると、税金だけでなく資産価値や安全面でもリスクが高まるので、早めに行動を起こし、後悔のない選択をしましょう。
本記事でわかることは以下の通りです。
- 空き家の固定資産税が6倍になるのはいつから?増額の対象と基準
- 空き家の固定資産税が6倍になるまでの流れ
- 空き家の固定資産税が減免されるケースとは?
- 空き家の固定資産税を6倍にしないための対策5つ
- 空き家を放置するリスク3つ

監修者
松屋不動産販売株式会社
代表取締役 佐伯 慶智
住宅・不動産業界での豊富な経験を活かし、令和2年10月より 松屋不動産販売株式会社 にて活躍中。それ以前は、ナショナル住宅産業(現:パナソニックホームズ)で8年間、住友不動産販売で17年間(営業10年、管理職7年)従事。
目次
空き家の固定資産税が6倍になるのはいつから?増額の対象と基準
空き家の固定資産税の増額の対象と基準には以下の5つのポイントがあります。
- 居住用の土地は「住宅用地の課税標準の特例」により固定資産税が軽減されている
- 「特定空き家」は固定資産税の軽減措置がなくなる可能性がある
- 法改正後は「管理不全空き家」も固定資産税が6倍の対象になる
- 固定資産税の増額は勧告を受けた翌年から
- 管理不全空き家に指定される条件は自治体により異なる
上記の制度や基準は、税額に大きく関わるため、正しく理解しておくことが重要です。
それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。
居住用の土地は「住宅用地の課税標準の特例」により固定資産税が軽減されている
固定資産税は、土地や建物を所有するすべての人に課される地方税ですが、住宅が建っている土地については「住宅用地の課税標準の特例」によって大きく軽減されます。
例えば200㎡以下の部分(小規模住宅用地)においては課税標準が6分の1に軽減され、200㎡を超える部分についても3分の1になるため、税負担が大幅に抑えられているのが現状です。
この特例は「居住の実態」があることが前提で、誰も住んでいない空き家であっても、適切に管理されていればしばらくの間は適用されるケースが多いです。
しかし、空き家の状態が悪化し、景観や衛生、周辺環境に悪影響を及ぼすようになると、特例の対象から外れる可能性があります。
その結果、税額が大幅に増えるリスクがあるのです。
「特定空き家」は固定資産税の軽減措置がなくなる可能性がある
2015年5月26日に施行された「空家等対策特別措置法」により、地方自治体は危険な空き家や周辺に悪影響を及ぼす空き家を「特定空き家」として指定できるようになりました。
「特定空き家」に認定されると、それまで適用されていた住宅用地の特例が解除され、固定資産税の負担が最大6倍に増えます。
特定空き家に該当する条件は以下のとおりです。
特定空き家の条件
- 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
特例空き家に指定された場合、自治体から勧告や命令を受け、改善が行われないと行政代執行(強制解体)となるケースもあります。
所有者には管理責任が問われ、経済的な負担も一気に膨らみます。
法改正後は「管理不全空き家」も固定資産税が6倍の対象になる
2023年12月の法改正により、「管理不全空き家」という新たな分類が創設されました。
管理不全空き家とは、現時点では倒壊の危険などはないものの、将来的に特定空き家に移行する可能性があると見なされた空き家を対象としています。
例えば、屋根の一部が劣化している、庭の雑草が繁茂している、外壁にひび割れが見られるなど、管理状況が不十分だと判断されれば指定対象になります。
管理不全空き家に指定されても、住宅用地の特例が外れるため、結果として固定資産税が6倍になる可能性があります。
つまり、以前よりも早い段階で課税強化の対象となる仕組みになったのです。
空き家を放置していても「まだ大丈夫」と考えるのは危険で、より早期の対策や管理が求められる時代になったと言えるでしょう。
固定資産税の増額は勧告を受けた翌年から
固定資産税の増額は、勧告を受けた翌年度から反映されます。
税の軽減措置は、毎年1月1日時点の状況をもとに判定されるため、勧告を受けた年の翌年から住宅用地特例が適用されなくなり、税額が増加するのが一般的です。
なお、改善措置によって勧告が取り下げられることもありますが、固定資産税の軽減措置が復活するかどうかは自治体の判断に委ねられることが多く、確実に回避できるとは限りません。
通知を受けた場合は、早期に自治体へ相談し、指導内容に従って適切な対応を行うことが重要です。
管理不全空き家に指定される条件は自治体により異なる
「管理不全空き家」に該当するかどうかの判断は、法律上の定義を踏まえつつも、最終的には各自治体の条例やガイドラインに委ねられています。
つまり、同じような空き家であっても、A市では対象外だがB市では管理不全空き家とされる、ということもあり得るでしょう。
また、近隣住民からの苦情が寄せられたり、行政の定期巡回で状況が確認されたりすることで、空き家の調査が行われるケースもあります。
特に都市部では景観や防犯の観点から、指定が厳しくなる傾向があります。
日頃から現地を確認し、最低限の管理を怠らないことがリスク回避につながるでしょう。
空き家の固定資産税が6倍になるまでの流れ
空き家の固定資産税が6倍になるまでには、以下のとおり段階的な行政手続きがあります。
まず、自治体による調査や近隣住民からの通報などをきっかけに、空き家の状態が問題視されます。
現地調査の結果、「倒壊の危険がある」「衛生上問題がある」「景観を著しく損なっている」などの要件に該当すると、自治体は空き家を「特定空き家」あるいは「管理不全空き家」に指定する判断を下します。
指定された後、所有者に対してまずは助言・指導が行われます。
それでも改善が見られない場合は、勧告に進み、ここで初めて固定資産税の住宅用地特例が解除されます。
つまり、この勧告が「6倍課税」のトリガーです。
税額が実際に増えるのは、勧告を受けた翌年の1月1日時点での課税分からです。
勧告後に改善しても、タイミングによっては1年間は増額された税額を支払う必要があるため、迅速な対応が重要です。
空き家の固定資産税が減免されるケースとは?
空き家の固定資産税が減免されるためには主に以下の2つのケースがあります。
- 住宅用地の課税標準の特例
- 自治体独自の減免制度や軽減措置
それぞれの適用要件は詳細について解説します。
住宅用地の課税標準の特例が適用される要件
空き家の敷地が「住宅用地」として扱われる場合、固定資産税の課税標準額が軽減される特例が適用されます。
この制度の概要については前述しましたが、小規模住宅用地(200㎡以下)の場合、課税標準額が評価額の6分の1に、一般住宅用地(200㎡超の部分)は3分の1に軽減されるという仕組みです。
住宅用地の課税標準の特例については基本的に「住宅が建っている土地」が対象になりますが、例外があります。
例えば、建物が取り壊されて更地になってしまうと住宅用地としての扱いを失い、特例の適用対象外となります。
また、建物が極端に劣化しており、居住の実態がないと判断されると「特定空き家」「管理不全空き家」に指定され、住宅用地として認められないこともあるため注意が必要です。
空き家であっても「住宅」としての体裁を維持することが、固定資産税の軽減において重要なポイントです。
自治体独自の減免制度や軽減措置の例
住宅用地の特例とは別に、自治体が独自に定める減免制度を利用できる場合があります。
例えば、倒壊の危険がある空き家を自主的に解体した所有者に対して、一定期間固定資産税を減額する制度や、空き家を地域活性化のために賃貸や民泊に活用する際に、税負担を軽くする措置などが設けられていることがあります。
制度の概要は条件については自治体ごとに内容が異なり、申請が必要な場合が多いです。
実際の例としては、名古屋市では老朽空き家の除却に対して助成金を支給する制度があり、除却後の土地に対する課税を一定期間軽減する取り組みも行われています。
東京都や京都市などでも、特定の地域に限って空き家再生を促進する補助や税制優遇を導入しているケースがあります。
最新情報は各自治体の公式サイトで確認しましょう
空き家の固定資産税を6倍にしないための対策5つ
空き家が「特定空き家」「管理不全空き家」に指定されて税負担が上がらないようにするためには、以下の対策があります。
- 空き家をリフォームする
- 行政からの助言・指導内容を改善する
- 不動産会社に管理を委託する
- 売却を検討する
- 土地を有効活用する
対策を早期に行えば、自治体からの勧告を防ぎ、税制上の優遇措置を維持しやすくなります。
以下でそれぞれの対策について解説します。
空き家をリフォームする
空き家を放置すると老朽化が進み、「管理不全空き家」や「特定空き家」に指定されるリスクが高まります。
老朽化が進む前に、外壁の補修や屋根の修理、窓ガラスの交換など、最低限のリフォームを施すことで、見た目の安全性や清潔感を保つことができるでしょう。
対策を施すことにより、行政からの指導対象になるのを防げるだけでなく、資産価値の維持にもつながります。
また、空き家をリフォームすることで、将来的に賃貸や売却を検討する際の選択肢が広がります。
外観や設備を整えておけば、入居希望者や購入希望者からの印象も良くなり、空き家の利活用がスムーズに進むでしょう。
放置による劣化を防ぎ、再活用の道を残しておくことが大切です。
行政からの助言・指導内容を改善する
行政は空き家に対して段階的に助言・指導・勧告と対応を強めていきますが、初期段階の助言や指導のうちに対応すれば「管理不全空き家」の指定を回避できる場合があります。
例えば、雑草やごみの放置、外壁の破損などを指摘された場合は、速やかに清掃や修繕を行いましょう。
対応状況を写真で記録し、自治体に報告しておくと安心です。
助言・指導の段階で改善が見られないと、勧告へと移行し、固定資産税の増額が現実のものとなります。
したがって、行政からの通知を軽視せず、指摘事項にしっかりと向き合う姿勢が重要です。
不動産会社に管理を委託する
空き家が遠方にある、または管理する時間が確保できない場合は、不動産会社に管理を委託するのも有効な方法です。
定期的な見回り、清掃、通風、草木の手入れといった基本的な管理業務を任せられるため、空き家が荒れるのを防げます。
特に、高齢者の単独所有や相続によって複数人が共有しているケースでは、管理の手間や責任の所在が曖昧になりがちです。
専門業者に任せることで物理的・心理的な負担を軽減し、適切な維持管理を継続できます。
費用はかかるものの、固定資産税6倍のリスクを避けられると考えれば、十分に検討する価値があります。
売却を検討する
空き家の維持管理に手が回らない、あるいは今後使う予定がない場合は、思い切って売却するのも現実的な選択肢です。
空き家を手放すことで、固定資産税や修繕費といったコストから解放されるほか、現金化することで他の資産活用にもつなげられます。
特に地方の空き家は早期売却が鍵になるため、早めの判断が重要です。
また、最近は空き家の活用に意欲的な事業者や移住希望者も増えており、自治体の支援制度とあわせて売却が進めやすくなっています。
「このまま放置するくらいなら誰かに使ってもらいたい」と考えるなら、売却を通じて空き家を活用してもらう道を選びましょう。
土地を有効活用する
空き家を解体した場合、土地を有効活用することで税負担の軽減につなげることが可能です。
例えば、駐車場として貸し出す、貸し農園や資材置き場として活用するなど、用途を変えることで収益化できる場合があります。
ただし、建物を解体して更地にすると住宅用地の課税特例が適用されなくなり、固定資産税が上がる可能性があります。
自治体によっては土地活用の助成制度や相談窓口を設けていることもあるので、事前に確認しておくとよいでしょう。
空き家を放置するリスク3つ
空き家を放置すると以下のような3つのリスクがあります。
空き家を放置する主なリスク
- 近隣住民とのトラブルにつながる
- 資産価値が減少する
- 不法侵入や放火のおそれがある
所有者が住んでいない家を放置しておくと思わぬトラブルを招く恐れがあり、実際、地域社会や不動産市場にもさまざまな影響が出ています。
以下に詳しく解説しますので、大切な資産を守るためにも、空き家放置の危険性をしっかりと把握しましょう。
近隣住民とのトラブルにつながる
空き家を長期間放置していると、庭の雑草が伸び放題になったり、ゴミが不法投棄されたりと、周囲に悪影響を与えるようになります。
また、建物の老朽化によって屋根や外壁が崩れかけていたり、悪臭や害虫の発生源になっているケースも少なくありません。
管理が行き届いていない空き家は、近隣住民にとって大きなストレスとなり、「迷惑施設」と見なされてしまうこともあるでしょう。
地域の景観や生活環境が損なわれ、周辺住民との信頼関係が崩れてしまう恐れがあります。
資産価値が減少する
空き家を放置すると、風雨や湿気による建物の劣化が急速に進みます。
定期的な換気や清掃が行われないことで、カビや腐食、シロアリ被害などが発生しやすくなるでしょう。
住宅としての機能が低下した空き家は、売却や賃貸といった活用が難しくなり、市場での評価額も大きく下がってしまいます。
また、空き家の存在が地域全体の不動産価値にも悪影響を与えることがあり、資産として保有し続けるメリットが薄れてしまう可能性もあります。
不法侵入や放火のおそれがある
空き家は人の出入りがなく目が行き届かないため、不審者にとって格好の標的となります。
実際に、不法侵入や違法な住みつき、さらには犯罪の拠点として利用されてしまうケースも報告されています。
また、管理がされていない空き家は、放火のリスクも高まります。枯れ草やゴミが溜まっていると燃え広がりやすく、周囲の住宅や住民に被害が及ぶおそれがあるでしょう。
空き家で事件が発生した場合、所有者が責任を問われる可能性もあるため、空き家の防犯対策や定期的な見回りは非常に重要です。
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まとめ
空き家の固定資産税が6倍になるリスクは、法改正により広い範囲に及ぶようになりました。
「特定空き家」だけでなく「管理不全空き家」も対象となる今、放置によるリスクはますます深刻化しています。
空き家を放置することで、税負担だけでなく資産価値の下落や近隣トラブルといったリスクも高まります。
リスク回避のためには、定期的な管理や早期の活用・処分を検討することが重要です。
リフォームや管理の委託、売却など、空き家の状況に応じた選択肢を検討し、将来への不安を減らしましょう。