
ペット飼育可のマンションを売却しようと考えたとき、
「通常の物件より高く売れるのか気になる」
「ペットを飼っていたことで査定額が下がるのでは?」
「高額査定のポイントについて知りたい」といった疑問を持たれる方は多いのではないでしょうか。
近年、ペット市場の拡大やライフスタイルの変化により、ペット飼育可のマンションは一定の需要を維持しています。
しかし、マンションの売却価格は物件の状態やアピールの仕方によって大きく変わるため、適切な準備が必要です。
本記事では、ペット飼育可マンションの市場動向や査定額に影響する要因、高額で売却するためのポイントについて詳しく解説します。

監修者
松屋不動産販売株式会社
代表取締役 佐伯 慶智
住宅・不動産業界での豊富な経験を活かし、令和2年10月より松屋不動産販売株式会社にて活躍中。それ以前は、ナショナル住宅産業(現:パナソニックホームズ)で8年間、住友不動産販売で17年間(営業10年、管理職7年)従事。
この記事でわかること
- ペット飼育可の中古マンションの売却額について
- ペット飼育可のマンションの査定額が低くなる要因について
- ペット飼育可のマンションを売却するためのコツ
目次
ペット飼育可の中古マンションの売却額は下がる?
ペット飼育可のマンションは近年人気が高まっており、一定の需要があります。
しかし、売却時の査定額については、ペットを飼育していたかどうかによって大きな差が生じます。
- ペットを飼育していない場合:室内の状態が良好なケースが多く高額売却が可能
- ペットを飼育していた場合:傷や汚れにより売却額が低くなる可能性が高い
ペット飼育可でありながら、実際にペットを飼っていなかった場合は、室内の状態が良好なケースが多いため、高値での売却が期待できるでしょう。
一方で、ペットを飼育していた場合、室内の使い方によっては査定額が下がる可能性があります。 その理由として、室内の傷や損傷、ペットの毛の付着、特有の臭いなどが挙げられます。
購入希望者が物件を内覧する際、これらの要素が悪印象を与えてしまう可能性があり、値下げしての売却や値引き交渉につながることが多いのです。
特に、壁紙やフローリング、建具などにペットの爪痕や噛み跡が残っている場合、修繕の必要が生じるため、買い手側の心理的なハードルが高くなります。
また、ペットの臭いが残っていると、ペットを飼っていない人やアレルギーを持つ人にとって敬遠される要因になります。
そのため、売却時にはこれらの問題を解決し、できるだけ良い状態で物件を市場に出すことが重要になります。
ペットの飼育ができるマンションは高額売却の可能性が高い
ペットの飼育ができるマンションは高額売却の可能性が高いです。
- DINKs世帯や単身世帯の増加
- ペット市場が拡大している
ペット飼育可の中古マンションがここ数年で急速に人気を集めている背景には、DINKs世帯(共働きで子供のいない夫婦)や単身世帯の増加、そしてペット市場の拡大という2つの大きな社会的な変化加があります。
これらの層は、従来の不動産購入層とは異なり、ペットを大切なパートナーとして考える傾向が強く、住まい選びにおいてもペットと快適に暮らせる環境を重視するようになっています。
以下でペットの飼育ができるマンションが高額売却できる要因について解説します。
共働き世帯や単身世帯の増加がペット可マンションの需要を後押ししている
DINKs世帯や単身世帯の増加により、ペット飼育可マンションの需要が高まっています。
参考:共働き等世帯数の年次推移|令和5年版厚生労働白書-つながり・支え合いのある地域共生社会-|厚生労働省
DINKs世帯は共働きで経済的に安定しており、ペットにかける費用や時間に余裕があるのが特徴です。
彼らにとって、ペットは単なるペットではなく、家族の一員であり、生活の一部として欠かせない存在です。
そのため、ペットと快適に暮らせる環境が整ったマンションを優先的に選ぶ傾向が強くなっています。
特に、ペット専用の設備が充実した物件や、ペットと一緒に楽しめる共用スペースを備えたマンションは、高い関心を集めやすいでしょう。
一方、単身世帯においても、ペットの存在は精神的な安定や生活の充実感をもたらす重要な要素といえます。
都市部では特に、仕事のストレスを和らげる目的でペットを飼う人が増えており、単身者がペットを迎え入れることが一般的になりつつあります。
ペットと暮らすことで、孤独を感じにくくなり、生活にメリハリが生まれると考える人も少なくありません。
そのため、単身世帯向けのコンパクトな間取りでもペット飼育可の物件は非常に人気が高く、特に都市部では高値で取引されるケースが多く見られます。
このようなDINKs世帯や単身世帯の増加は、不動産市場においてペット飼育可マンションの需要を支える大きな要因となっています。
例えば、総務省のデータによると、近年、単身世帯は全体の40%を超える割合を占めるようになり、特に都市部ではその傾向が顕著です。
今後もDINKs世帯や単身世帯の増加が続くことで、ペット可マンションの市場価値はさらに向上し、売却のチャンスも広がっていくでしょう。
参考:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(令和6年1月1日現在)|総務省
拡大するペット市場がペット可マンションの需要を高めている
近年、ペット市場の急成長が、ペット飼育可のマンションへの需要をさらに押し上げています。
2024年の調査によれば、国内のペット関連市場は約1.8兆円規模に達しており、この数字は今後も拡大していくと予測されています。
現在ペットを飼育していないが将来的に飼いたいと考えている人々の最大の障害となっているのは、「集合住宅に住んでいて、ペット飼育が禁止されているから」という調査結果もあります。
この調査結果から、ペット飼育可のマンションを購入し、すぐにペットを飼育したいと考えている人が多いことがわかります。
加えて、リモートワークの普及がペット可マンションの需要を後押ししています。
在宅時間が増えたことで、ペットとの時間をより大切にしたいと考える人が増え、ペットと快適に過ごせる住環境の重要性が一段と高まりました。
この傾向は、特に都心部のペット可マンションに顕著に表れており、市場価格の上昇にも影響を与えています。
今後も、ペット市場の成長が続く限り、ペット飼育可のマンションは競争力を維持し、資産価値の上昇が期待されるでしょう。
参考:全国犬猫飼育実態調査 | 一般社団法人ペットフード協会
ペットの飼育ができるマンションの査定額に影響を与える2つの要因
ペット飼育可のマンションを売却する際、査定額に影響を与える要素はいくつかあります。
- ペットの爪や歯による室内の傷やダメージがある
- ペットのいる家特有のニオイが残っている
以下でそれぞれの影響について詳しく解説します。
ペットの爪や歯による室内の傷やダメージがある
室内でペットを飼育していた場合、フローリングや壁、ドアなどに爪や歯による傷がつくことが多く、査定額に影響を与える要因になります。
特に、中型犬・大型犬を飼育していた場合は、床の傷が深くなりやすく、補修が必要になることが多いです。
猫の場合は、爪とぎの跡が壁や建具に残っていることがあり、壁紙の張り替えや補修が必要になることもあります。
傷やダメージの程度によっては、大掛かりなリフォームが求められるため、事前に修繕を行うことで査定額の下落を防ぐことができます。
特に、ペット可のマンションを探している買い手は、すぐに快適に住めることを重視するため、内覧時に室内が良好な状態であることが売却成功の鍵です。
ペットのいる家特有のニオイが残っている
ペットを飼っていると、飼い主が気づかないうちに室内に特有の臭いが染みついていることがあります。
特にカーペットや壁紙などの布・紙製品は臭いを吸収しやすく、適切な消臭対策を行わないと、内覧時に購入希望者の印象を損ねてしまう可能性があります。
ペットのニオイが強く残っていると、特にペットを飼っていない人やアレルギーを持つ人にとっては大きなマイナスポイントとなります。
消臭剤や芳香剤だけでは根本的な解決にはならないため、売却額を下げたくない方はプロのクリーニング業者に依頼するなどの対策が必要です。
また、エアコンや換気扇のフィルターもペット特有の臭いの原因となることがあるため、徹底的に掃除をすることが望ましいでしょう。
ペットが飼育できるマンションを売却するための対策
ペットを飼育していたマンションを売却する場合、一般的な中古マンションの売却とは異なる点がいくつかあります。
- 消臭対策を徹底する
- ペットによる傷や汚れがある場合は修繕を行う
- 周辺のペット環境や設備は積極的にアピールする
特に、ペットを飼っていたことによる室内の傷やニオイ、さらには購入希望者の印象を左右する細かなポイントに注意が必要です。
また、ペットを飼っていなかった場合と、実際にペットを飼っていた場合では、売却のアプローチが異なります。
ペットを飼っていなかった場合、通常の中古マンションとして高額売却が狙えますが、ペットを飼っていた場合は、事前に適切な対策を行わないと査定額が下がる可能性があります。
以下のポイントを押さえて、ペット飼育可のマンションをスムーズに売却しましょう。
消臭対策を徹底する
ペット飼育可のマンションを売却する対策として、消臭対策を徹底することが挙げられます。
ペットを飼育していた物件では、室内にペット特有のニオイが残ってしまうことがあります。
ペットのニオイは、住んでいる本人には気にならなくても、初めて訪れる購入希望者には強く感じられることがあります。
特に、ペットを飼っていない人やアレルギーを持つ人は、ニオイを理由に購入を見送る可能性があります。
まず、換気を十分に行い、新鮮な空気を取り込むことから始めましょう。
- 窓を開けて換気を行う(1日2~3回、30分以上が理想)
- 空気清浄機を活用する(ペットのニオイや毛を除去)
- 消臭効果のある観葉植物を置く
また、カーペットや壁紙はニオイを吸収しやすいため、クリーニングや張り替えを検討するのが効果的です。
エアコンや換気扇のフィルターを長期間掃除していないと、使用するたびにニオイが室内に拡散されてしまう可能性があるため、フィルターの掃除や交換を行うことが望ましいでしょう。
消臭対策を徹底することで、購入希望者に良い印象を与え、スムーズな売却につながる可能性があります。
ペットによる傷や汚れがある場合は修繕を行う
ペットを飼育していたマンションを売却する際は、ペットによる傷や汚れは事前に修繕しましょう。
ペットを飼育していたマンションでは、室内の傷や汚れが査定額に大きな影響を与えることがあります。
特に、フローリングや壁、ドアの損傷は、内覧時に購入希望者の印象を大きく左右するポイントです。
犬の爪による引っかき傷や、猫の爪とぎの跡、さらにはペットが噛んだ跡が目立つ場合、買い手は修繕費用を考慮し、価格交渉をしてくる可能性が高くなります。
- 小さな傷は市販の補修キットを使用する
- 広範囲の傷は張替やリフォームを検討する
フローリングにできた小さな傷は、市販の補修キットを使用すればある程度目立たなくすることができます。
しかし、広範囲にわたる傷や深いダメージがある場合は、部分的な張り替えやリフォームを検討する必要があるでしょう。
また、ペットの毛や皮脂が染みついていると、室内の清潔感が損なわれるため、細かい部分まで丁寧に清掃することが大切です。
周辺のペット環境や設備は積極的にアピールする
ペット飼育可のマンションを売却する際は、周辺のペット環境や設備は積極的にアピールすることが大切です。
ペットと共に快適に生活できる環境が整っているマンションは、ペットを飼っている人にとって魅力的な物件です。
近隣にペット同伴可の公園やドッグランがある場合、散歩がしやすい点を強調すると良いでしょう。
また、動物病院やペットホテル、ペットショップが徒歩圏内にあることも、購入希望者にとって安心材料となるため、ポータルサイトやチラシの説明文に含めることをおすすめします。
マンション自体にペット向けの設備が整っている場合も、アピールポイントです。
最近のペット飼育可のマンションでは、ペット用の足洗い場や専用ゴミ捨て場、ペットと共に利用できるエレベーターなど、ペットを飼育する人に配慮した設備が充実しています。
上記の設備があることで、ペットとの暮らしがより快適になるため、購入希望者の関心を引きやすくなるでしょう。
ペット専用の足洗い場 散歩などで汚れた犬の足を建物内に入る前にシャワーで洗い流す設備。 エントランス付近に設置していることが多く、ペット可マンションにはよく付いています。
ペット乗車中サイン付きのエレベーター ペット乗車中を他の入居者の方へお知らせするエレベーターです。 動物が苦手な人やアレルギーのある人に配慮した設備です。
汚物ダスト ペットを飼う方にとってフンの持ち帰りは欠かせないマナーの一つですが、専用ダストがある事で、部屋まで汚物を持ち帰らなくても捨てる事が出来て便利です。
ペット飼育可のマンションの売却価格は上昇傾向にある
ペット飼育可のマンションは近年、資産価値が上昇傾向にあります。
ペットを飼う世帯の増加と、ペット飼育可マンションの需要が高まっていることが背景にあります。
特に都市部では、ペットを飼えるマンションの供給が限られており、希少価値の高さから売却価格が上昇している傾向があります。
以前は、ペットの飼育を禁止しているマンションが多かったため、ペット可マンションは選択肢が限られていました。
しかし最近では、ペット飼育可の物件が増えたことにより、ペットと共に暮らしやすい環境が求められるようになっています。
そのため、ペット可マンションの需要は今後も益々伸び、さらなる価格の上昇が見込まれます。
また、中古物件であっても、適切にメンテナンスが施されていれば、高額査定を狙うことが十分可能です。
売却を検討する際には、こうした市場の動向を把握し、最適なタイミングで売却を進めることが重要です。
ペットが飼育できるマンションの地域別の市場価格動向
ペット飼育可マンションの市場価格は、地域ごとに異なる動きを見せています。
特に都市部では、ペットを飼育できる物件の需要が高まり、価格上昇が顕著に表れています。
その一方で、郊外エリアでは、広々とした環境でペットと暮らしたい層が増え、比較的手頃な価格で購入できるペット可物件の人気が高まっています。
地域ごとの市場価格の傾向を把握することで、売却のタイミングや戦略をより効果的に計画できます。
都市部(愛知県名古屋市)の価格動向
愛知県の名古屋市では、ペット飼育可マンションの供給が限られているため、需要の高さが価格の上昇を後押ししています。
特に、中心部に位置するマンションは、ペット可の物件数が少ないことから希少性が高く、一般の中古マンションよりも高い価格で取引されるケースが増えています。
例えば、名古屋駅周辺の駅近ペット可マンションは、アクセスの良さと生活の利便性から人気が高く、通常の物件よりも価格が高めに設定されています。
ペット専用の設備が充実したマンションは、高値で取引される傾向があります。
また、DINKs世帯や単身世帯が増加していることも、名古屋市のペット可マンションの価格を押し上げる要因となっています。
これらの層は、ペットと快適に暮らせる環境を求めており、設備の充実した物件に対しては、価格が高くても購入を検討する傾向が強いのが特徴です。
郊外・地方都市(静岡県西部、浜松市)の価格動向
一方で、静岡県西部の浜松市といったエリアでも、ペット飼育可マンションの需要が拡大しています。
これらの地域では、都市部に比べて敷地が広く、自然環境が豊かであることから、ペットを飼うのに適した環境が整っているのが魅力です。
特に、浜松市内のマンションでは、近隣にペットと散歩できる公園やドッグランがあることが、購入希望者にとって大きな決め手となるケースが増えています。
都市部と比べると手頃な価格でペット可物件を購入できる点が、ペットを飼いたい層にとって魅力的です。
まとめ
ペット飼育可のマンションを売却する際には、ペットの飼育歴があるかどうかが査定額に大きく影響します。
特に、室内の傷や汚れ、ペット特有の臭いが残っている場合、適切な修繕や消臭対策を行うことで、売却価格の低下を防ぐことができます。
また、周辺のペット向け環境や設備を積極的にアピールすることで、ペットを飼いたい購入希望者にとって魅力的な物件として印象付けることが可能です。
さらに、ペット可マンションの市場価格は上昇傾向にあり、特に都市部では高値で取引されるケースが増えています。
売却を検討する際には、市場の動向を把握し、エリアごとの価格変動を分析することで、より有利な条件で売却することができます。
適切な対策を講じ、購入希望者のニーズに合ったアプローチを取ることで、スムーズな売却につなげましょう。